今回は、住宅会社のホームページに求められる「デザインの在り方」について考えてみます。
日々、全国の工務店・ビルダーの方々とホームページの打ち合わせをしていると、
「来月のキャンペーンを目立たせたいから、もっと大きく派手に目立つように作ってよ!」
「他部署の分譲地だけ目立っているから、うちの分譲地も目立たせて!」
「トップページの切り替わるメインビジュアルを、もっと増やしてこれもアピールしたいんだけど!」
・・・と、様々なご要望を頂戴します^^;
ですが、こうしたご要望の通りに、たとえ目立つ(派手な)バナー・メインビジュアルを作っても、実は皆さんが期待される程は「クリックされない」というケースが多々あります。
それはデザインが悪いんじゃないの?キャッチが悪いんじゃない?などなど、確かに色々な可能性もゼロではありませんが、私はそうではないと思っています。
この「いくら目立たせても、大してクリックされない謎」は、Webの中でのユーザの行動心理を知ることで、少しヒントが見えて来ます。
今日は、そんな話です。
能動的メディアと受動的メディア
では、質問です。
突然ですが、“ホームページ(Webサイト)”というメディアは、情報の受け手(閲覧者)の側から見た場合に、「受動的なメディア」でしょうか、それとも「能動的なメディア」でしょうか。
これは、他のメディアと比較をすると、簡単に理解することができます。
“TV” や “ラジオ” は「受動的」なメディアの代表格
“TVCM” や “ラジオCM” の場合、視聴者はとくにその企業のことを知らなくても、その会社の商品やサービスに全く興味が無くても、半ば強引に強制的に広告が流れます。視聴者は、主体的に観る広告を選ぶことは出来ず、見続けるかチャンネルを変えるかTVを消すかしか選択肢がありません。そのため、うまくすると視聴者の記憶の片隅に残ることが可能です。(興味がある人に対する効果は、言うまでもありませんね。)
ほとんどの方が、興味は無いけれど、何となくCMのサウンドロゴだけが耳に残っている、という経験をお持ちのことでしょうから、これは感覚的にお分かり頂けるかと思います。
同様に “折り込みチラシ” や “看板” なども、音は出ませんが、「消費者の目に勝手に飛び込んで行くメディア」という意味では、「受動的」なメディアと言って良いと思います。
ここで大切なことがあります。
“TVCM” にしても、“折り込みチラシ” にしても、これらの広告メディアは、他の多くのライバル企業の広告と一緒に消費者に向かって飛び込んで行くメディアである、ということです。
TV番組のCM枠には、通常数本のCMが流れますし、週末の新聞には数多くのチラシが折り込まれます。
つまり、“TVCM” や “折り込みチラシ” は、「目立たないことには、届きもしないメディア」なのです。
そこで、作り手はあの手この手で消費者に「届ける」ために、まずは「目立つ方法」を考えなければなりません。
TVCMで言えば、キッチンに立つ主婦や、CM中にちょっと席を外した人の注意を向けるために「チャイム」や「絶叫」や「耳に残る音楽」「人気タレント」や「無音(逆に)」など・・・。いずれも、つい「何かな?」と画面を見て貰うための工夫をしています。
同様にチラシでも、他のたくさんのチラシに埋もれてしまって、存在すら気付かれなければ意味がありませんので、「ど派手なキャッチ」や「圧倒的な情報量」や「分厚い紙」や「変形の紙」など、まずはチラシの束から引き抜いて、開いてもらうための工夫が必要です。
ホームページは、「能動的」なメディア
では、本ブログの主題である “ホームページ” とは、どのようなメディアでしょうか。
ホームページとは、基本的には「たまたま開くということが、絶対に無いメディア」です。
貴社のチラシを「たまたま」目にしたり、貴社のモデルハウスや現場見学会に「たまたま」通りがかって来場される人はいますが、貴社のホームページに「たまたま」辿り着く人は皆無です。
貴社のホームページに辿り着くためには、以下の3通り。
1.自らが、何らかの「検索ワード」を入れて検索行為を行う
2.自らが、どこか他のサイトのリンクをクリックする
3.自らが、ネット上の広告をクリックする(広告出稿している場合)
と、大きく分けると、このぐらいしかありません。(SNSからの流入も2に含めます。)
これらは、いずれも消費者自らの「能動的」な行為によるもので、貴社ホームページ側としてはただただ「受動的」に、閲覧しに来てくれるのを待つしかありません。
ここが、他の既存広告メディアと全く異なる部分です。
つまり、工務店やビルダーなど住宅会社のホームページで考えると、閲覧しに来てくれている人の何割かは、既に貴社のことをどこか(チラシ、雑誌、クチコミなど)で知っていて、検索やリンクから貴社のホームページに辿りついている人で、その他の人達も、少なからず「家づくり」について考えいる人であると言えます。
それでないと、検索もしませんし、リンクもクリックしませんよね。
(もちろん、取引先や求職者、スタッフの家族が閲覧したり、完全にミスクリックでの流入もありますが、本題から外れますので割愛します。)
客引きの役割、店内の役割
ここで、話を分かりやすくするために、1つのたとえ話をしましょう。
あなたは、夜の繁華街を友達と歩いています。居酒屋さんに行こうとしていますが、まだ入るお店は決めていません。
通りには、居酒屋さんの派手で大きな看板が並び、客引きのお兄さんもたくさん声を掛けてきます。
看板には、その店の食材・料理のアピールや「飲み放題」などの文字が並び、電飾もビカビカしています。客引きのお兄さん達も、メニューを片手に「飲み放題で*,***円ですよ!」「飲み物1杯サービスします!」と必死にアピールして来ます。
さて、ここで考えたいのですが、これらの “看板” や “客引きのお兄さん” の役割は何でしょうか。
それは、「認知して貰おう」「記憶に残って貰おう」「来店して貰おう」ということですよね。
つまり、これら行為は “TVCM” や “折り込みチラシ” と同じ役割と言えます。
一方で、その後お店に入ると、どうでしょうか。
まともなお店の場合、今度はゆっくりと落ち着いて楽しく食事が出来るように、店内の内装や照明、スタッフの対応に変わります
店側は、美味しい料理を愛想良く素早く提供して、次回もリピートして貰おうと考えているからです。
間違っても、店内にビカビカの電飾看板はありませんし、いつまでも外の客引きのテンションで本日のオススメ料理を勧めて来る店はありませんよね。(あるのかも知れませんが、あくまで一般的な話として。。。)
当然ですが、店内ではもう目立つ必要が無いからです。
つまり、ホームページに求められている役割はコレです。
チラシと同じデザインで良いのか?
さて、本日の主題です。
ここまで読んで頂いてお分かりの通り、“TVCM” や “折り込みチラシ” と、“ホームページ” とでは、根本的にメディアの特性が違います。
そのため、当然求められるデザインは違うのです。
よく 折り込みチラシのようなビカビカのデザインのホームページを見掛けますが、個人的にどうなのかな?と思います。
店内に電飾ビカビカの看板のある居酒屋に、長居したいと思うでしょうか。
目立たせる要素が増えれば増えるほど、全ての要素が目立たなくなり、どこに何があるのかわからない=使い難い(居心地の悪い)ホームページになってしまうものです。
もちろん、「CI(コーポレート・アイデンティティ)」は守るべきですが、それを守った上で、それぞれの役割に応じたデザインであるべき、と考えます。
では、参考までに、恐らく国内で最大級にチラシを撒いていると思われるユニクロさんを例に見てみましょう。
以下、今朝我が家に折り込まれたチラシです。
よく見るデザインですね。
そして以下が、ユニクロさんのスマホサイトです。
どうでしょうか。
それぞれ、デザインが全く違いますね。
ユニクロさんの “チラシ” に求められていることは、1にも2にも「来店させること」でしょう。
そのため、セール(超特価)をアピールし、これでもか!と数多くの商品を羅列しています。
一方、スマホサイトはチラシと比べると、かなりおとなしく感じませんか。
恐らく、ユニクロさんとしては、そもそもスマホサイトに来ている人達は、その時点で「ユニクロ」に興味があることはもちろんのこと、購入したい商品がある程度決まっている人も多いし、更には購入意欲が高いことも想像されるので、「派手さ」よりも「使いやすさ」「情報の見つけやすさ」を優先しているのでしょう。(あくまでチラシに比べて、の話です。)
そのため、チラシのように「超特価」のアピールや「商品の羅列」ではなく、「必要な情報がどこにあるのか?」ということを意識して、しっかりと情報設計(UI)を作られているように思います。
(チラシのデザインを踏襲した「デジタルチラシ」というコンテンツがありますが、このコンテンツはチラシを見た人にネットで買って貰うために、敢えてチラシと同じテイストで作っているものと思われます。PVやここでの購買率は分かりませんが。)
新商品を目立たせたいと思うなら...
以上、今回はホームページのデザインの考え方についてでした。
住宅業界は、長らくメインの広告媒体がチラシでしたので、どうしてもチラシ感覚のホームページデザインに陥りがちな業界だと思っています
でも、上記の通り、メディアの特性の違い、閲覧される方との接触方法の違いを理解すれば、チラシと同じデザインが必ずしも良い訳では無いこともご理解頂けるかと思います。
(・・・では、一体どんなデザインが良いのか??・・・とお悩みの方はご相談下さい^^!)
それでは今日はこの辺で。
皆様のビジネスがうまく行きますように!
※今回は、あくまで住宅会社の「自社ホームページ」に限った話です。
LP(ランディングページ)や、リスティングのイメージ広告などのデザインは別の考えが必要です。
こちらにについては、また別の機会にお伝え出来ればと思います。
15.12.18